メリー(マリオン・ディクソン)のサーカスシーン。
「サーカス」(Цирк)は1936年のソ連(ロシア)映画。グリゴリー・アレクサンドロフ脚本・監督。イサーク・ドゥナエフスキー音楽。ミュージカル映画。
プロパガンダ的要素がたっぷり含まれているのですが、更にロシアに興味を持ってしまうようなストーリーの映画です。ミュージカル映画とされるだけあって歌や音楽も魅力的な映画なのですが、特に挿入歌「祖国の歌」は公開後人気を博したそうです。
あらすじ
アメリカ。サーカスの花形アメリカ人マリオン・ディクソン(リュボーフィ・オルローワ)が大衆に石を投げられ、リンチされそうになっている所を命からがら電車に飛び乗って逃げるシーンから始まります。車内にはちょうど彼女のスキャンダルを新聞で読んでいるドイツ人男性がおり、マリオンは男の腕の中で意識を失います。
マリオンはモスクワで新たな生活を始め、あるサーカスで曲芸を続けています。そこで出会った好青年マルトゥイノフ(S・ストリャコフ)と恋に落ちるのですが、彼女のスキャンダルを知っているドイツ人マネージャーはスキャンダルをばらすと彼女を脅し、「俺くらいしかお前と結婚しようなんて思う男はいない」と彼女に求愛します。。。
共産主義の人種に対するイデオロギーなのか、かなり理想的な人種共存についてがテーマになっています。30年代当時の映画で考えるととても前衛的だと思うのですが、ライバルであったアメリカの当時の現状と比べるような「当てつけ」の効果もあったのでしょうか?少しロシアの人種差別について調べてみたくなってしまいます。
主人公マリオン・ディクソンを演じているリュボーフィ・オルローワは、歌えてピアノも弾けて、しかもサーカスの曲芸までこなせる魅力的な女性です。彼女の曲芸シーンも素敵なのですが、映画全体に裏舞台のシーンや、ダメ犬とその飼い主のエピソード、芸達者な動物の演技など、めまぐるしく挿入されるシーンも楽しめます。そして上の動画でもチラチラ登場していますが、チャップリンへのオマージュが多々挿入されています。
個人的に気になったのは、所々に見える当時のサーカスのポスターです。古くて味のあるのグラフィックデザインで、レトロ感たっぷりのポスターが背景に上手に使われています。監督はシーンの繋ぎ部分のトランジッションにもこだわりがあるようで、俳優の背後に羽が出て、それが次の興行のポスターになったりと凝った演出をしています。
サーカス映画がお好きな方におすすめの映画です。
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