「マルメロの陽光」(El Sol del membrillo)は1992年のスペイン映画。ビクトル・エリセ監督作品。スペイン現代美術を代表する写実主義画家、アントニオ・ロペスの創作過程を追ったドキュメンタリー。
一般人でも機能の良いデジカメでかなり良い写真を撮れてしまう現在で、写実主義絵画のありがたみはイマイチ希薄に思えてしまいますが、この映画はアントニオ・ロペスの創作過程を撮影していく事で、画家とその題材へのアプローチのし方が捉えられています。
映画の中でも言っていますが、写真に撮って投影して自分の好きな構図で写し取れば簡単な作業(実際にこの手法で絵を描く画家も多いですね)なのに、アントニオ・ロペスは敢えてイーゼルの位置と自分の立ち位置を固定し、視点の線を糸で張り、マルメロの葉や実にもラインを付けて視点を計り、という細かい作業をして的確に写実していく手法を取ります。
現在のマルメロの木を的確に描き出す細かい作業を根気よく続けるロペス。絵画を見る側からすれば葉の位置や実の位置がずれていても実際にその木を見る事は無いのだから気づかないだろうし、もしくは見比べても気づかない人も居るかも知れません。でも敢えて自分の植えた愛着のあるマルメロの木の葉の一枚一枚の位置や、日ごとに重くなって垂れ下がって来るマルメロの位置でさえ、位置が下がるごとに印を付けて調整し的確に描写しようとロペスは試みます。
毎日庭に出てマルメロの木を見続け、風や移り変わる日の光の位置を感じ取りながら製作を続けていくロペス。時には雨が降り、大きなテントを張ってマルメロの木のそのままの状態を保存したり、空きも深まり垂れ下がってしまった枝を友人で画家のエンリケに支えてもらいお喋りをしながら製作を続けたりします。
画家が絵を描く姿を淡々と映し出していくドキュメンタリーなのですが、そこには写実主義(リアリズム)へどれだけリアルに近づけるか、画家と自然の対話のようなそのやり取りが描き出されています。
アントニオ・ロペスが作業を始めるのと同時に彼のアトリエの改修工事も始まるのですが、現実をキャンバスに写し出す画家の作業と、その彼のアトリエという現実世界の実用的な空間の工事が平行して描き出されていて、面白い対比になっています。
マルメロの陽光 [DVD] / アントニオ・ロペス・ガルシア, マリア・モレノ, エンリケ・ゲ...
![マルメロの陽光 マルメロの陽光 [DVD] / アントニオ・ロペス・ガルシア, マリア・モレノ, エンリケ・ゲラン (出演); ビクトル・エリセ (監督)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51YZ9NY6BRL._SL160_.jpg)

![Antonio Lopez Garcia: Drawings [ハードカバー] / Antonio Lopez-Garcia, Francisco Calvo Serraller (著); Distributed Art Pub Inc (Dap) (刊) Antonio Lopez Garcia: Drawings [ハードカバー] / Antonio Lopez-Garcia, Francisco Calvo Serraller (著); Distributed Art Pub Inc (Dap) (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41OyYC7dUhL._SL160_.jpg)
![Antonio Lopez Garcia: Paintings and Sculpture [ハードカバー] / Francisco Calvo Serraller, Miguel Delibes (著); Distributed Art Pub Inc (Dap) (刊) Antonio Lopez Garcia: Paintings and Sculpture [ハードカバー] / Francisco Calvo Serraller, Miguel Delibes (著); Distributed Art Pub Inc (Dap) (刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51Iiduft93L._SL160_.jpg)