エンディング部分なので、ネタばれ注意。
「母」(МАТЬ)は1926年のソ連(ロシア)映画。マクシム・ゴリキー原作。フセヴォロド・プドフキン監督作品。サイレント映画。音声は1968年にモスフィルムで追加されています。
帝政ロシアのやり方に憤り、徐々に革命の意識に目覚める母親を描いた作品。「戦艦ポチョムキン」と並んで、ソビエト映画史で高い評価を受けています。社会主義レアリズム創始者とされるマクシム・ゴリキーの「母」が原作です。
あらすじ
1905年、革命前のロシア。貧しい暮らしをするニーロヴナ(ヴェーラ・パラノフスカヤ)。労働者の夫ミハイルは、家にあるものを持ち出してはアルコールに換えてしまう。ある日、時計を持ち出されそうになってそれを阻んだ事から、夫は彼女を殴り、息子パーヴェル(ニコライ・パターロフ)に止められる。
息子パーヴェルは革命運動に参加しており、ある晩仲間から預かった銃を床下に隠すのだが、夢うつつの母ニーロヴナにそれを見られてしまう。パーヴェルは仲間達と工場でのストを計画していたのだが、それを嗅ぎ付けたスト破りの暴力団が襲い掛かってきて乱闘になる。
パーヴェルはうまく逃げおおせるのだが、家ではスト破りに加わって亡くなった父の亡骸が待っていた。そこに軍隊が武器やストのビラを探しにやって来るのだが、「正直に話せば放免してやる」という軍の言葉を信じた母は、武器を渡してしまい、パーヴェルは逮捕されてしまう。。。
サスペンス映画ではないのですが、ぐいぐい引き込まれるような構成のストーリーです。人物の描き方や俳優達の演技の仕方もモダンで、当時の映画と比べると登場人物に感情移入しやすい映画です。
貧しい生活の中で質素に生きている母ニーロヴナが、愛する息子を想って取った行動が仇になってしまい、裁判では国に都合良く片付けられてしまう結果に、「正義はどこ?」と憤る場面。そして連れ去られる息子にすがりつき許しを請うその姿はとても痛々しくて、母親の無念さが伝わってきます。
夫で苦労し、息子でも苦労する彼女。そんな彼女も息子同様時代の波に飲み込まれて行きます。息子の仲間である革命派達と徒党を組んで息子のいる監獄に行進して行く母の顔には、それまでの打ちひしがれおどおどしていた様子はなく、希望が浮かんでいます。
革命派の行進の映像と共に川に浮かぶ流氷の映像が挿入されているのですが、流氷が鬩ぎあって荒々しくぶつかり合うシーンは、これから起こるであろう激突を思わせます。また、牢獄のパーヴェルに母親を介して仲間から連絡が来るシーンで、春の川の水と、喜ぶ赤ん坊の映像が挿入されていたりします。感情を投影させたシーンの使い方で、平面的ではない映像表現を可能にしています。
赤軍の旗を涙を流しながら屹然と掲げる母親のシーンは圧巻です。
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![母 [DVD] / ヴェーラ・バラノフスカヤ, ニコライ・バターロフ (出演); フセヴォロド・プドフキン (監督) 母 [DVD] / ヴェーラ・バラノフスカヤ, ニコライ・バターロフ (出演); フセヴォロド・プドフキン (監督)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51f2tnOBQzL._SL160_.jpg)
