2013年04月11日

最強のふたり Intouchables



最強のふたり」(Intouchables)は2011年のフランス映画。コメディ/ヒューマンドラマです。

リッチ層の人と低所得者層の人がたまたま出会い、お互いに良く影響し合う、というコメディ映画は割とありますが、この「最強のふたり」は実在のモデルがいます。ただ、この映画では介護人は黒人ですが、実際はアラブ系のだったそうです。

あらすじ
パリに住む先進麻痺で車いす生活を送る富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)の介護人の面接に、黒人青年ドリス(オマール・シー)がやってきます。その他の応募者が自分がどれだけ介護人としての経験があってその仕事に向いているのかを語る中、ドリスは失業保険を引き続き貰えるようにするため、不合格のサインが必要だからとハナから自分が仕事をもらえる訳は無いと決めつけて去って行きます。

そんなドリスを何故か気に入ったフィリップは彼を採用し、彼の身の回りの世話の仕方をフィリップの助手イヴォンヌから学んで行きます。フィリップを障害者だからといって腫れ物に触るような態度を取らず、時には無礼な程に純粋にそのままを喋って実行してしまうドリスの存在が、徐々にフィリップの生活を変えて行きます。。。

介護のあり方というものを考えさせられる映画でした。お金はいくらでもあって、最先端の医療と介護をいくらでも受ける事が出来るのに、実はフィリップには肉体的な介護だけでなく精神的、魂のケアの方が重要で、そこを何の資格も経験もない青年がやってのけてしまいます。

資格をもったプロ達が、仕事として技術を持ってフィリップに接してもそれは肉体面での助けにしかならない訳ですね。トイレでさえ自分で出来ないフィリップは、肉体の自由ばかりでなく、愛する妻も失ってしまい人生も見失いつつあります。そんな中で、「障害者だから」という垣根をあまり気にしないで心の赴くままに純粋に行動するドリスが、人生を諦めつつあったフィリップを再生して行きます。

もちろん、ドリスの方も盗みの前科があったり、仕事が無い上に母親(叔母)の元を追い出されてしまっていて、フィリップの元で働く事で自分の新たな可能性を見出して行きます。そのまま仕事が無ければろくでもない事に手を出す可能性があった彼の環境も、フィリップに出会った事でガラッと変わります。

二人の人生のセカンドチャンス的な出会いが、重いドラマではなく、笑いを程よく誘うコメディタッチで描かれた作品です。

最強のふたりコレクターズ・エディション(2枚組)(初回限定仕様) [DVD] / フランソワ・...
最強のふたりコレクターズ・エディション(2枚組)(初回限定仕様) [DVD] / フランソワ・クリュゼ, オマール・シー, オドレイ・フルーロ, アンヌ・ル・ニ (出演); エリック・トレダノ, オリヴィエ・ナカシュ (監督)■両面印刷Ver■ [映画ポスター] 最強のふたり (INTOUCHABLES) [DS]
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2012年07月11日

聖者の眠る街 The Saint of Fort Washington


英語版

聖者の眠る街」(The Saint of Fort Washington)は1993年のアメリカ映画。

都会の影的存在のホームレスを描いた映画です。アメリカでは精神的な病気を抱えていたり、医療保険を持っていなくて事故や病気になってしまった人などが、若くしてホームレスという状態に陥ってしまう事があります。マット・ディロンが演じる心優しいマシュー青年はカメラマンを志していて才能も持っていたのですが、統合失調症にかかってしまい、身内からも見放されてホームレス状態に陥ってしまいます。

あらすじ
ニューヨーク。ホームレスの黒人男性ジェリー(ダニー・グローヴァー)は宿泊施設フォート・ワシントンへ入るのを待っていた時にマシュー(マット・ディロン)というフィルムの入っていないカメラを持ち歩く青年に出会います。宿泊施設で一夜を明かすのは初めてのマシューを見かねて、ジェリーは貴重品を体から放すな、眠っている時に靴を盗まれるからそのままにしておくな、などと指南をします。

ジェリーは柄の悪いリーロイ(ビング・レイムズ)にからまれたマシューを「俺の息子だ」といって庇い、二人は徐々に仲良くなって行きます。友達にお金を持ち逃げされて商売が潰れてしまい、妻と子供に愛想をつかれてしまったジェリーは、昔のように果物を卸売りして人生を取り戻すという夢をマシューに語り、車の窓拭きをしながらお金を貯める生活に彼を引き込んで行きます。。。

ダニー・グローヴァーってやっぱりいい俳優ですね。嫌な役でもなんでも独自の口調とちょっと癖のある演技で、その役柄が際立つような感じに仕上げます。あのちょっとおっとりした喋り方が、悪役になると化けの皮を被ったいい人面のうさん臭い男になり、この映画のような役柄では、どんなに辛い状況にあってもちょっと天然ボケが入ったようなのんびりさがあるような人の良い男になったりします。

イケ面のマット・ディロンも、この映画ではちょっとトロくて純粋なかまってしまいたくなるような青年を上手に演じています。

ほろっとさせられてしまう映画です。
聖者の眠る街 [DVD] / マット・ディロン (出演); ティム・ハンター (監督)
聖者の眠る街 [DVD] / マット・ディロン (出演); ティム・ハンター (監督)

posted by 淀川あふるー at 16:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヒューマンドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年06月18日

夏の終止符 KAK YA PROVYOL ETIM LETOM



夏の終止符」(KAK YA PROVYOL ETIM LETOM)は2010年のロシア映画。アレクセイ・ポポグレブスキー監督作品。

ロシアの北極圏辺境の島の気象観測所が舞台です。広大でとてもシンプルな景色の中にある小さな観測所は、人の居ない僻地に閉じ込められたような閉鎖感のある立地条件です。その孤独な環境で世代の違う男二人が日々データを観測し、本庁と無線連絡を取るのが唯一の外部との交信手段。
そんな環境の中で一緒に働く、若い男と中年男のジェネレーションギャップとすれ違いが、ある悲劇を呼び起こします。

あらすじ
ベテランのセルゲイ(セルゲイ・ブスケバリス)と新米のパーシャ(グリゴリー・ドブリギン)は北極圏辺境の島の気象観測所で日々データを取り、本庁にデータを無線で送る日々を暮らしています。島には軍用で使用された残骸のようなものがいくつかあり、核爆弾の不発弾?のようなものをガイガーカウンターでチェックしたりもします。

ある日、セルゲイは観測をパーシャにまかせて妻の好きな鱒を釣りに数日間出かけてしまいます。一人でのびのびと留守番をするパーシャの元へ、本庁から「セルゲイの妻と息子が事故に遭った」という連絡が入ってきます。。。。

欧米のおっさんと比べるとロシアのおっさんって、ちょっと日本人のおっさんと近い部分があるのかな?と思ってしまいました。ベテランのセルゲイは、若いパーシャに厳しく仕事を教えるのですが、たまに小突いたりしてしまいます。欧米だと「パワハラだ!」とか訴えられてしまいそうですね。

頑固で寡黙で、仕事には厳しくプライドを持っているのだけど、とっても家族想いで奥さんの好きな魚を釣りに出かけて行ったり、奥さんから送られて来た連絡についていた略語(スマイリー)を返したり、かなり微笑ましい所もあります。

音楽を一日中聴いて何も無い観測所付近で跳ね回って遊んでみたり、目を盗んだ隙にコンピューターでゲームをしてみたり、まだまだ若いパーシャにはおっさんの気持ちが伝わらず、彼のあり方にただただ恐怖してしまいます。

ジェネレーションギャップがこじれて悲劇を呼んでしまうのですが、閉鎖感のある立地条件の中でどんどん恐怖に駆られてワイルドな行動を取ってしまうパーシャは、まったく笑い事じゃない位に自分で勝手に追いつめられて行ってしまいます。確かに、得体の知れない放射性物質が側にあるような環境の誰もいない島で、得体の知らないおっさんと閉じ込められてしまった、と考えるとかなりきつい状況ではありますが。

そこまで起伏の激しい映画ではないのですが、心理的に追いつめられる状況の緊迫感はなかなかジワジワときます。

おススメの映画です。

夏の終止符 [DVD] / グレゴリー・ドブリギン, セルゲイ・プスケパリス (出演); アレ...
夏の終止符 [DVD] / グレゴリー・ドブリギン, セルゲイ・プスケパリス (出演); アレクセイ・ポポグレブスキー (監督)





posted by 淀川あふるー at 18:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヒューマンドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年05月31日

その男は、静かな隣人 He Was a Quiet Man



その男は、静かな隣人」(He Was a Quiet Man)は2007年のアメリカ映画。 ドラマ/恋愛/スリラー映画。

クリスチャン・スレーターが、禿げ散らかした冴えないおっさん役で登場します。とろくておどおどした雰囲気は、自己主張の激しいアメリカ人達の間ではほぼ居ない人状態、もしくは邪見に扱われてしまう対象で、心の中に周囲に対するどす黒い恨みを抱えて生きています。

あらすじ
冴えない中年会社員ボブ(クリスチャン・スレーター)は、年下の上司に馬鹿にされながらこき使われる日々を送っています。結婚はもちろんしておらず、家では一人寂しく水槽にいる金魚と会話を妄想する、そんな暮らし振りです。

会社でのボブは机の中に銃を隠し持ち、弾を数えながら誰を撃つか妄想しては実行出来ずにいたそんなある日、ボブの同僚の男が同じフロアにいた同僚達に次々と銃をぶっ放し、殺害して行きます。ボブのお気に入りだった笑顔の素敵な社長秘書のヴァネッサ(エリシャ・カスバート)にとどめの一発を撃とうとしていた男をボブは自分の拳銃で射殺します。

一躍ヒーローとなり、会社での立場や環境が変わったボブ。でも一命を取り留めたヴァネッサは脊髄を損傷しており、全身不随になってしまいます。。。

どんな男の人でもだいたい美しい女性に惹かれるというのが定説ですが、ボブは高嶺の花ヴァネッサに恋心を寄せています。ストーリーの流れからして、ヴァネッサがどんな女であるかある程度予測はついているようで、彼の妄想するディテールは大した物ですが、彼の偏見で作り上げられたヴァネッサ像でしかありません。「身の程を知っていれば不幸が起きなかったのに。。。」とも思えてしまうようなストーリーです。誰でも一度は大志を抱いてみたいのか?暴走する自我が抑えられなくなるような、精神状態の不安定さが生々しいです。

社会で自分が到底就ける事の無いポジションに憧れたり、充実した私生活や社会生活に憧れたり、絶対に手に入れる事が出来ないような女に憧れたり、自分に無い物に対する恨みつらみで精神状態がおかしくなってしまいます。一人で居る分、そういう人達がそこに辿り着くまでどのような努力をしてきたかを考える事は出来ないのでしょうね。

所々で「あれ?」と思わせるヒントになるようなシーンが登場します。ストーリーの展開のさせ方は面白いですね。現実と被現実のからませ方がいいです。

ああ、でも「忘れられない人」がこんなになってしまうなんて。。。

その男は、静かな隣人 [DVD] / クリスチャン・スレイター, エリシャ・カスバート, ウィ...
その男は、静かな隣人 [DVD] / クリスチャン・スレイター, エリシャ・カスバート, ウィリアム・H・メイシー (出演); フランク・A・カペロ (監督)
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2012年03月10日

酔いがさめたら、うちに帰ろう。



酔いがさめたら、うちに帰ろう。」は2010年の日本の映画。原作は漫画家西原理恵子さんの夫で戦場カメラマン・鴨志田穣の自伝的小説。東陽一監督。

アルコール中毒の男性とその家族を描いた映画です。お酒は私も好きですが、この映画のように血を吐くまで飲んでしまって、飲むのを止められないというのはどうもピンときません。昔ヘルス(健康)のクラスで、ドラッグ程ではなくても依存度が高く、アル中男性の息子は同じくアル中になる確率が高い、というのを学んだ覚えがあります。遺伝子的な傾向なのか、それとも環境的な理由なのでしょうか。お酒は簡単に手に入る分、やっかいですね。

あらすじ
戦場カメラマンの塚原安行(浅野忠信)は重度のアルコール依存で、それが理由で漫画家の妻・由紀(永作博美)とも離婚している。塚原は自宅で大量に血を吐いたのを母親(香山美子)に発見され、救急車で病院に連れて行かれる。それは10回目の吐血で、そのまま3ヶ月の入院する事になる。

二人の子供達は由紀が引き取り、すくすくと育っている。吐血を繰り返しながらも酒を飲むのを止めない塚原に呆れ返ってはいるものの、由紀は知り合いの医師を訪れ、夫のアルコール依存症について相談する。。。

薬物中毒やアルコール依存症の患者がいる家庭は、だいたい機能不全に陥ります。そしてある段階まで来ると生活が成り立たなくなってしまいます。漫画で家計を支えていた由紀は、夫が仕上がった原稿を破り捨てた事で離婚を決意します。二人の子供を育てるのに、収入源である仕事の妨げに夫がなってしまったら、子供を食わせる為に離婚か、全員共倒れになるかどちらかしかないですね。

とてもしっかりとしている妻の由紀は、離婚した後も夫とちゃんと交流して、何かあればすぐに駆けつけるし、子供からお父さんを奪わずに面会にも協力的だし、ダメな男にかなり出来た妻です。夫が立ち直ればいつでも家族はやり直せる、そんな暖かい家族環境が背後に見え隠れします。

ダメな夫を演じる浅野忠信さんも、ダメな男なんだけどしらふの時には憎めない親近感を持てるような男性を演じています。舌足らずで可愛い娘に頬を緩ませるような、アルコールさえ飲んでいなければ良い父親という印象が残ります。対する一見頼り無さげに見えるけどしっかりしていて、ちゃんと自分の足で自立しながら夫を見守り続ける妻役の永作博美さんもとても良いです。

ストーリーが良い分、前半のちょっと漫画っぽい演出はいらなかったかな?と思えてしまいました。アルコールを飲んで暴れるシーンで、チャックが開いて黒塗りで悪魔の様に変わった塚原が出て来る、とかそこまで大げさな演出が最後まで続くのかとハラハラしましたが、後半はもっとしっくりする感じです。ちょっと個性的な病院の患者さんたちもとても良いです。主な登場人物だけでなく、周辺人物も上手に個性が引き出されています。

ほんのりと切ない、そんな後味の残る映画です。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD] / 浅野忠信, 永作博美, 市川実日子, 光石研,...
酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD] / 浅野忠信, 永作博美, 市川実日子, 光石研, 香山美子 (出演); 東 陽一 (監督)酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [Blu-ray] / 浅野忠信, 永作博美, 市川実日子, 光石研, 香山美子 (出演); 東 陽一 (監督)酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [単行本] / 鴨志田 穣 (著); スターツ出版 (刊)
posted by 淀川あふるー at 16:45 | Comment(2) | TrackBack(0) | ヒューマンドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2012年03月08日

クリスチーネ・F Christiane F. – Wir Kinder vom Bahnhof Zoo


デヴィッド・ボウイのコンサートシーン。とってもかっこ良く登場します。

クリスチーネ・F」(Christiane F. – Wir Kinder vom Bahnhof Zoo) は、1981年の西ドイツ映画。原作はクリスチーネ・F(クリスチアーネ・ヴェラ・フェルシェリノヴ)の自伝です。

「サーティーン」という映画が2003年にアメリカで作られて、当時13歳の娘さんがいた知り合いからその映画の感想を聞いた事があります。「最近の子は13歳くらいでこの映画みたく悪くなるのよ〜〜。もう、なんでもやっちゃう子がいて、娘のクラスの子が素行が悪くなって学校来なくなったと思ったら、お腹大きくして昼間からモールでウロウロしてたわ〜〜。」なんてお話を聞いて、そういう子がいるのに衝撃を受けた覚えがあります。もちろん、皆がそうなるわけではないのですが、非行に走る一定の子供の年齢が低下しているのですね。

この「クリスチーネ・F 」は1981年に作られているのですが、70年代後半から80年代初期のベルリンが舞台です。その当時既に子供達がドラッグ中毒になって、体を売りながら薬を買うお金を稼いでいる現実があったのですね。13歳の(映画の途中で14歳の誕生日を迎えます)主人公クリスチーネが、あどけない可愛い顔に濃い化粧を施して夜遊びを始めてしまうのですが、あれよという間に薬にハマってボロボロになっていく姿が、まるでドキュメンタリーの様に克明に描き出されています。

あらすじ
シングルマザーの母親と妹と3人で暮らすクリスチーネ(ナーチャ・ブルンクホルスト)。ある日妹は父親と暮らす為に家を出て行ってしまいます。友達とクラブに行って夜遊びを覚えてしまったクリスチーネ。渡されたLSDで最初は吐いたりしていたのですが、どんどんそのクラブシーンに馴染んで行き、薬にも抵抗が無くなってしまいます。

そこでデトレフ(トーマス・ハウシュタイン)と出会い、彼に恋心を抱くのですが、デトレフやその友達アレックスはヘロインを買う為に体を売ったりして暮らしています。デヴィッド・ボウイのコンサートの帰り、クリスチーネはお金を得る為に血を売った友達にヘロインを買ってあげる為にお金を渡し、「ヘロインはやめろ」という彼らを押し切って「一回だけだから」と鼻から吸引してハイになります。。。

シングルマザーの母親との関係は悪くはないのですが、母親にボーイフレンドが出来てクリスチーネはネグレクト気味にされます。13歳くらいだと反抗心は芽生え始めても、まだまだ親の注意を惹きたい年齢ですね。クリスチーネはそんな母親にあたるのではなく、外にどんどん出て行ってしまいます。そして、母親はほぼ不在の存在として映画にはあまり登場してきません。恋人に夢中で、娘の変化に気づかないのでしょうか。

まだ何も分かっていない13歳くらいの少女だからこそ、怖いもの無しで薬にも気軽に手を出してしまう。「1回だけだから中毒になんてならない」そんな甘い事を言っているうちに、蟻地獄にはまった蟻の様にずるずるとジャンキーになっていってしまいます。「トレイン・スポッティング」のようにコメディ演出がある映画では無い分、彼女の生活は生々しくて救いの無さが目立ちます。

監督のインタビューの中で、ベルリンの学校を尋ねて1000人くらいの中からクリスチーネ役のナーチャを探し出した事が語られているのですが、素人で、薬ももちろん使った事も無い13歳の少女が、かなり迫真の演技で落ちぶれていきます。薬が切れた時のピリピリとした雰囲気や、ハイになっている時の廃人手前の表情。初めは綺麗であどけなさが残る顔に、時々見せる繊細そうな表情の演技をしていたナーチャが、見る見るうちに崩れて堕ちて行く様が凄い迫力です。あまりに痛々しくて、見ていて苦しくなるくらいです。

ドロドロの底辺で生きる少年少女達。そこに落ちてしまった理由が何であれ、彼らが自ら抜け出せる道はないんだよ。良識ある大人達が不在の、もしくは監督が言う様に大人が無視して素通りしていく空間で生きる彼らは、まるで底なし沼に落ちた様に見えてきます。大人達に現実を無視して欲しくない、素通りして欲しくない、そんな気持ちがあるから、彼らの有様を包み隠す事無く描き出しているのでしょうね。

クリスチーネ・F [DVD] / ナーチャ・ブルンクホルスト, トーマス・ハウシュタイン, デ...
クリスチーネ・F [DVD] / ナーチャ・ブルンクホルスト, トーマス・ハウシュタイン, デヴィッド・ボウイ (出演); ウルリッヒ・エデル (監督)Christiane F. [CD, Soundtrack, Import, From US] / David Bowie (CD - 2001)
posted by 淀川あふるー at 17:42 | Comment(1) | TrackBack(0) | ヒューマンドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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