2011年08月03日

英国王のスピーチ The King's Speech



英国王のスピーチ」(The King's Speech)は、2010年のイギリス映画。アカデミー賞(作品賞、主演男優賞、監督賞、脚本賞)4部門を受賞した作品です。

現女王エリザベス2世の父であるジョージ6世のお話です。多少の脚色はあれど、なるべく史実に沿って描いているそうです。ただし、実際に言語聴覚士ライオネル・ローグがジョージ6世の吃音症の治療に当たった期間はもっと長いそうです。さて、この吃音症ですが、ライオネル・ローグはジョージ6世の吃りの原因になるような、彼の育った環境なども診察の間に聞き出したりして、友達兼カウンセラーの様にジョージ6世の治療に当ります。

あらすじ
吃音症をもつヨーク公アルバート王子(コリン・ファース)は、満足に公務であるスピーチをする事が出来ません。専門家の元で治療を試みるのですが全く役にたたず、アルバート王子自身も自分に憤っています。そんな中、妻エリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)はオーストラリア出身のライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)を紹介され、彼の住む下町のみすぼらしい住まい兼オフィスを訪れます。ローグは王子自身が自分のオフィスに出向くのなら、と治療を承知します。

ローグのオフィスを訪れたアルバート王子は、お互いを愛称で呼び合う事を強要され、挙げ句の果てにはヘッドフォンで大音量で音楽を聴きながらアメリカ製の最新録音機に向かってシェイクスピアの朗読をさせられるのですが、頭に来てローグのオフィスを去ります。。。

大学で必須科目だったので、嫌々ながらスピーチのクラスを取った事があるのですが、この映画の冒頭の大衆に演説しなければならないアルバート王子のシーンは、当時の緊張感を呼び覚まして手に汗をかきながら観ていました。クラスの教壇に立ってのスピーチでもあれだけ緊張したくらいだから、吃音症と言うハンデを持って大衆の前に立つ事がどれだけ冷や汗モノか。。。

真面目なお話なのですが、センス良く笑いを取る、そんなシーンが沢山ある映画です。『王子たるもの。。。』という教育を受けて来たであろうアルバート王子(後のジョージ6世)が、ローグの不思議な治療法に振り回され、真面目な顔して早口言葉を続けたり、歌う様に話したり、仕舞いにはFワードを大声で発したり。(ああ、王子様がそんな汚いお言葉を)自分の吃音症を克服しようとまじめに取り組む姿が、真面目であるからこそ笑えるシーンになっていたりします。

そして個人的に目から鱗だったのが、アルバート王子の兄デイビッド、その離婚歴のあるアメリカ人女性の為に王位を捨てたというロマンスで知られるエドワード8世です。この映画で観ると、それがこの当時どれだけ無責任な事だったかが分かります。第二次世界大戦前、ヒットラーの台頭でヨーロッパに緊張が走っているそんな頃に、離婚歴のある人妻(凄い!)にメロメロになって、『彼女を喜ばせる為ならどんな事でも。。。』なんてやってたら王様業が勤まるわけがありません。

そんな兄に引き換え、吃音症を持ちながらもしっかりと国の事を考えて行動出来たのがジョージ6世だったのですね。「兄ちゃんがダメなら、僕が頑張る!」そこに至る彼の奮闘振りに、見る側はどんどん引き込まれて応援せざるを得なくなります。

それにしても、まだそう遠い昔でもない王室のお話を映画に出来る、というのは英国王室がオープンだからなのでしょうか。この位の時代の日本の皇室のエピソードを映画に、と考えると難しそうですよね。でも、とても観てみたい気がします。

ところで、ヘレナ・ボナム=カーターって芸達者な女優さんですね。個性派なのにどんな役柄でも難なくこなす、その芸の幅の広さが魅力的です。

まだ観てない方はお早めに

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英国王のスピーチ コレクターズ・エディション [Blu-ray] / コリン・ファース, ジェフリー・ラッシュ, ヘレナ・ボナム=カーター, ガイ・ピアース, ティモシー・スポール (出演); トム・フーパー (監督)英国王のスピーチ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD] / コリン・ファース, ジェフリー・ラッシュ, ヘレナ・ボナム=カーター (出演); トム・フーパー (監督)英国王のスピーチの真実 〜ジョージ6世の素顔〜 [DVD] / ジョージ6世, エリザベス王妃, 現エリザベス女王, コリン・ファース, トム・フーパー (出演)
posted by 淀川あふるー at 18:24 | Comment(2) | TrackBack(4) | 歴史/ドラマ 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2011年04月13日

冬のライオン The Lion in Winter


英語版

冬のライオン」(The Lion in Winter)は1968年のイギリス映画。アカデミー賞主演女優賞をキャサリン・ヘプバーンが受賞し、作曲賞も受賞しています。

初代イングランド王ヘンリー2世とその妻でフランス王ルイ7世妃だったエレノア(今で言う略奪婚ですね。)そして3人の息子達(リチャード、ジェフリー、ジョン)フランス王女で、もとはリチャードの婚約者としてヘンリーとエレノアに幼少期より育てられたけど、ヘンリ−2世に手をつけられたアリースを交えたドロドロのお家騒動を描いた映画です。

今で言うところの機能不全を起こしている家族、そこに王位継承権を交えた骨肉の争いが絡んできます。
史実に基づいて描かれている作品ですが、登場人物のキャラクターなどは伝承されてる人物像を元に上手に肉付けされて描き上げられています。

あらすじ
1183年のクリスマス。50歳になり、後継者の事を考えているヘンリー2世は、末息子のジョンを自分の妾でフランス王女でもあるアリースと結婚させて後継者にさせる事を考えているのだが、息子のリチャードとジェフリー、そして彼らの母親で、フランス国土を有し、何度もヘンリーに反旗を翻したため10年近く幽閉されている妻のエレノア、そしてフランス王フィリップをシノン城に呼び寄せる。

血気盛んで王の座を狙うリチャード、大臣としてジョンについているけど、あわよくば自分が王になろうと企む策士ジェフリー、ヘンリーに甘やかされて来て自分が王座を貰って当たり前と考える頭の弱いジョン。その3人を上回る策士で女傑のエレノアが絡んで、波瀾万丈のクリスマスを過す事になります。。。

各キャラクターの描き分けが強烈で面白いのですが、登場人物の背景がちょっと複雑なので書き出してみます。

ヘンリー2世(ピーター・オトゥール):老狸で、地方領主から国をまとめ上げる程出世した(広大な領地を持って嫁いでくれたエレノアのお陰でもある)だけあって、かなりの策士。女にだらしなく、リチャードの婚約者にと連れて来たフランス王女アリースにも手を出す。

エレノア(キャサリン・ヘプバーン):アリエノール・ダキテーヌ。女傑。フランス王ルイ7世の妻で、10歳も年下のヘンリーと再婚する恋多き女。十字軍にも参加したり、息子達をけしかけてヘンリーに反旗を翻したりしてヘンリーに幽閉される。(これは他の女ロザムンドにヘンリーの愛情が移ったための報復か?という感情も匂わせています。)実はヘンリーにかなりの愛情を持っており、若いアリースにも嫉妬する。頭が切れ、ヘンリーとも旧知の仲なので相手の手管を読み取って交戦する。ただし息子達には愛想をつかれてしまう。

リチャード(アンソニー・ホプキンス):後の獅子心王リチャード1世。血気盛んで戦好き。でも実はゲイ。フランス王フィリップがまだ王子だった頃に関係を結んだりする。3人の中で一番王としての器がありそうで、エレノアもリチャードを王の座に就けようと画策する。実は父親の愛に飢えている。

ジェフリー(ジョン・キャッスル):リチャードの様に自分が王の座を狙っている事はお首にも出さず、影で画策する策士。ジョンを手なづけて利用しようとしたり、フィリップと裏取引をしようとするが。。。

ジョン(ナイジェル・テリー):後の失地王ジョン。甘やかされた末息子で我が強く、頭が悪い。ヘンリーに一番愛され、王にと望まれるのだけど、その自分の事しか考えられないアマちゃんさで愛想を尽かされる。

フィリップ(ティモシー・ダルトン):ルイ7世の息子で、妻を奪われヘンリーに攻め滅ぼされた「弱かった」父を内心軽蔑していて、ヘンリーと対等に渡り合おうとする若きフランス王。リチャードと同性愛関係を結ぶが、内心はバカにしている?

アリース(ジェーン・メロウ):フランス王女で、フィリップの異母姉。リチャードの婚約者にと幼いうちからヘンリーの元へ送られて来るが、後にヘンリーの妾となる。

どうでしょう、このドロドロな家庭の事情。お昼のドラマも顔負けな、愛、憎しみ、嫉妬、地位欲、野望、羨望を絡めた駆け引きが勃発します。特にエレノア演じるキャサリン・ヘプバーンはお見事!と言うくらい手練に長けた女傑を演じていて、息子達を手のひらで転がしたりけしかけたり、夫であるヘンリーに対する愛憎を露にしながら対等に渡り合ったりします。確かに、こんなお母ちゃんだと息子達も愛想が尽きるかもしれません。「若い頃はあんた達息子に愛情は無かった」なんて台詞もあっさり言いのけてしまいます。

エレノアと夫であるヘンリーとの関係の描かれ方はすごく面白いです。妻と夫なのに、まるでお互いの腹の底を探り合い、見抜こうとし合うライバルのような関係。王に従う王妃ではなく、隙あらば寝首をも掻くけど実は愛情がお互いにある、というなんだか分からない(これじゃ息子達も振り回されるよ)ある意味トムとジェリー的な関係に描かれています。映画の終わり方に二人の関係のあり方が凝縮されているので、是非ご覧下さい。

HDマスター版
冬のライオン【HDマスター版】 [Blu-ray] / ピーター・オトゥール, キャサリン・ヘップバーン, アンソニー・ホプキンス, ティモシー・ダルトン (出演); アンソニー・ハサウェイ (監督)冬のライオン【HDマスター版】 [DVD] / ピーター・オトゥール, キャサリン・ヘップバーン, アンソニー・ホプキンス, ティモシー・ダルトン (出演); アンソニー・ハーヴェイ (監督)
posted by 淀川あふるー at 16:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史/ドラマ 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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