2012年05月19日

トスカーナの贋作 Copie conforme



トスカーナの贋作」(Copie conforme)は2010年のフランス/イタリアの映画。イラン人のアッバス・キアロスタミ監督/脚本。ジュリエット・ビノシュがカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。

凄い映画ですね。プロットもとても凝っています。ジェームス役のウィリアム・シメルはイギリスのオペラ歌手だそうで、畑が違うのにかなりの演技力です。

これまたストーリーが二つに取れてしまう巧妙な作りの映画です。どうしてそう取れてしまうかと言うと、ジュリエット・ビノシュとウィリアム・シメルの演技力もあるのですが、結婚について凄くつっこんだ、男と女の部分がとても克明に描かれているからなんですね。欧米ならではの個人主義が作用して、家族だの、子供だの付随して来る部分の結婚ではなくて、男と女の結びつきという結婚の大元の部分が描かれています。

さて、タイトルは「トスカーナの贋作」ですが、英語タイトルの方をみるとちょっとニュアンスが違ってきます。「Certified Copy」で、公認のコピーという意味になってきますね。フランス語が出来ないので、原題「Copie conforme」を英語に直すと、certified true copyとなるそうです。「贋作」偽物である事には違いないのですが、映画の中で『時間が経って公認のコピーになってしまった作品』の件があるので、この微妙なニュアンスに、プロットのその二つに取れてしまう巧妙なストーリーの流れが重なって、捻りが利いていますね。

あらすじ
イタリア、南トスカーナの小さな町が舞台です。新作「Copie conforme」という本の講演会にきたジェームズ(ウィリアム・シメル)。アートは本物でさえ実態のコピーであるから、アートの世界での真贋は無意味だと言う理論を展開する。講演にいたアンティークショップを経営するフランス人女性(ジュリエット・ビノシュ 役名は登場しません。)は、離れて一緒にいた息子と講演を途中退席する。

後に彼女のお店を訪れたジェームズは、彼女とルチニャーノへとドライブへ出かける。妹夫婦の事、アートの事、好きなジョークの事などを話しながら二人はとある贋作を見物し、新婚さんが縁起を担いで式を挙げるこの町で、二人は夫婦だと勘違いされたのをきっかけに、あたかも長年連れ添った夫婦であるように装い始める。。。

二人の台詞の掛け合いがいいですね。最初から本当に今知り合ったの?とつっこみたくなるくらいかなり喧嘩腰な会話が続くのですが、ジョークに対する考え方、妹夫婦のあり方に対する考え方、アートに関する考え方、全て噛み合わない価値観の違う二人。

ところが途中からそれが情熱的に恋をし、あばたもえくぼで結婚してしまい、15年経ってみるともの凄くすれ違ってしまっている夫婦の会話に変わります。二人を夫婦と思ってアドバイスして来たカフェの老女は、「男は仕事に夢中で家になんかいない方がいい」と言うけれど、もっと一緒にいてもらいたい彼女。仕事に夢中で不在の、子育てやら色々なものを半ば放棄した(単身赴任の?)無責任な旦那にジェームスは変わります。

結婚する前は違いも新たな発見で魅力的に映るかも知れないけれど、15年間の間にその価値観の違いは二人の亀裂をただただ大きくして行くだけの物に成り下がってしまった別居状態の夫婦。気持ちが全くない訳ではないのだけど、お互いの許せない部分が大きくなりすぎてしまって修復は不可能。最後のすれ違いながら音を出す鐘のシーンまで、かなりあっぱれな二人の対話が続きます。

これは結婚している方におススメの映画かも。
トスカーナの贋作 [DVD] / ジュリエット・ビノシュ, ウィリアム・シメル (出演); ア...
トスカーナの贋作 [DVD] / ジュリエット・ビノシュ, ウィリアム・シメル (出演); アッバス・キアロスタミ (監督)






posted by 淀川あふるー at 17:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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